ゲームの見方を変える:スポーツのよりサステナブルな未来の創造

 

競技場でランニングシューズを履く人

Jun 11, 2020 | Jon Penrice

私たちは、今日の「生産、使用、廃棄」モデルに代わる、実行可能なサーキュラーエコノミーの構築に取り組んでいます。


ダウに勤める中で私は、アジアそして世界中で、当社がより良い未来を創造し、その構築に向けて一貫して意味のある行動を取る責務を全うしようとするのをみてきました。

それはつまり、生産活動におけるループを閉じ、ごみの回収においてダウの行動を加速させるということです。世界の多くの地域では、効果的な廃棄物管理・回収のインフラが未整備であり、リサイクル率にもばらつきがあるため、大量のプラスチックが環境に入り込んでいます。こうした状況は受け入れがたいものであり、私たちはこの問題に対処する上で役割を果たしていく決意があります。

さらに進展が必要な分野は、埋め立て処理される繊維およびゴム廃棄物の量を減らすことです。昨年、シンガポールだけでも、同国の環境庁の統計によれば141,200トンの繊維および皮革のごみが廃棄されました。しかし、リサイクルされたのは、そのうちのわずか6%です。世界的に見ても、ゴムは依然として大きな環境問題です。ある調査では、使用済みのゴムのうち3〜15%しかリサイクルされておらず、ゴム屑の20%〜30%が埋め立て地に送られたり、貯めこまれたりしていると推定されています。

ゴミ容器いっぱいのリサイクルランニングシューズ

リサイクルされるのを待つ寄付されたランニ ン
グシューズ

こうした課題に取り組むため、イノベーション、技術そして情熱をどのように結集させているかを示す強力な例に、スポーツシンガポールとのパートナーシップがあります。このコラボレーションは、産業を変革し、あらゆる人々のために、より良い、よりサステナブルな未来を創造するというダウのコミットメントを象徴しています。同時にまた、お客様が未来に残るような影響をもたらし、目標を達成されるのをサポートさせていただくものです。

スポーツシンガポールは、地元のスポーツの場面にサステナビリティーの要素を取り入れたいと希望していました。そこで私たちは、1年前にGive Your Used Sport Shoes a Second Life(使わなくなったスポーツシューズに第二の人生を)というプログラムを立ち上げました。使用済みのスポーツシューズや上履きを一般の方々に寄付していただき、シンガポールの中心部に新たに建設されたカランフットボールハブのランニングレーンに再利用することを提案したのです。

このプロジェクトは、当社の革新的なソリューションが、明確な社会的ニーズを満たすという方向に向かう、理想的な機会になりました。スポーツ施設のジョギングレーンを、ダウのコンストラクション・ケミカルズ(DCC)事業およびポリウレタン(PU)事業のサステナブルな技術を活用して構築したのです。数々の受賞歴があるDCCのECOGROUND™水性バインダーおよびPUのVORAMER™無溶剤バインダー技術によって、アスリートに求められる強度、柔軟性、色彩のダイナミクス、耐久性を備えたジョギングレーンを安全に作ることに成功しました。

第一段階では、こうしたリサイクル素材を使って200平方メートル以上のジョギングレーンを作りました。粉砕したシューズを設計に取り入れることで、それまでジョギングレーンの設営に使われていた有害な粉砕リサイクルタイヤの使用を減らすことができました。私たちのソリューションは、より環境にやさしいソリューションであり、アジアで初めてのリサイクルシューズによるランニングトラックになりました。

私たちは、今日の「生産、使用、廃棄」モデルに代わる実行可能なサーキュラーエコノミー(循環型経済)の構築に取り組んでいます。この2カ月で、すでに7トン近くのスポーツシューズ(合計21,000足)を回収しました。それによって、焼却に伴う排出物とエネルギーコストを削減することができました。

大きく山積みされたトラック用リサイクル顆粒

トラック用リサイクル顆粒のクローズアップ写真

私たちのシューズへの関心は、ランニングトラックだけにとどまりません。世界的なシューズメーカーであるECCOとのパートナーシップもアジアで強化しています。液状シリコーンゴム(LSR)を使った3Dプリントの可能性を引き出し、わずか1時間で完全にカスタマイズされたミッドソールを楽しんでいただけるようになり、この製品カテゴリー全体に変革をもたらしました。

最高レベルのスポーツは、私たちの可能性の限界を押し広げ、今までになかったことをするように私たちを奮い立たせます。開催都市のインフラにサステナブルなソリューションを導入するなど、よりよい方法や新しい方法を探求することにおいて、オリンピックよりもすぐれたものが他にあるでしょうか。アジア太平洋地域は、平昌2018、東京2020および2022年の北京と、3つのオリンピック大会の開催地域です。ダウはほぼ40年間、何らかの形でオリンピックムーブメントに関わっており、競技の場や私たちの日常生活において、過酷な条件の中で密封、保護、絶縁、コーティング、耐久性、そして機能向上を実現する素材科学を提供しています。

東京2020オリンピックでは、お客様と協力し、バナー用の新しいモノプラスチック生地を開発し、素材のリサイクル可能性を高めました。バナーがイベントの雰囲気を醸成し、来場者の皆様に情報を提供する役割を果たした後、私たちはこれらのバナーを回収し、地元自治体と協力して、東京の街の公共ベンチなどへと生まれ変わらせる計画です。循環型経済の素晴らしい実践例です。

これらプロジェクトは、ダウのSeekTogether™(共に探そう)の価値観が実践されている実例です。 私たちは、アジア各国に持続的で前向きな変化をもたらすためにパートナーと協力し、イノベーションを続けています。こうしたプロジェクトは、独自の科学的ブレークスルー、研究開発の進展、技術革新、高度な専門性を通じて、今日と明日の課題を解決するという当社のビジネスを最高の形で表しています。また、人、地球、ビジネスに役立つ方法で、お客様とのコラボレーションソリューションを生み出すことの有効性を示しています。

ここアジアで、ダウのパートナーシップとイノベーションの強みを引き続き生かし、お客様、地域社会、ステークホルダーが直面する最大の課題に取り組んでまいります。この取り組みが私たちをどこへ導くのか楽しみですし、さらなる成功を分かち合えることを期待しております。
 

ジョン・ペンライス
ダウアジア太平洋地域社長